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Dダイマー

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血液凝固系は、血液中にある12種類の血液凝固因子とカルシウムイオン、リン脂質が関与し、凝固因子の連続的な活性化を通じて、最終的にフィブリノゲンから安定化フィブリンが形成される一連の反応系です1)。血管が障害されると、まず血小板が凝集塊を作って傷口をふさぎますが、その後凝固因子活性化と凝固カスケード進行が続き、最終的には不溶性のフィブリンが生じて止血機構が終了します。ところが、ここで形成された血栓は異物であり、また血栓があると血流が阻害されますので、組織が修復されるとともに今度は血栓を分解する線溶系がはたらき始めます。
血漿中のプラスミノーゲンが活性化され、プラスミンという酵素が生成し、このプラスミンが凝固により生成したフィブリンを分解してDダイマーその他の分解産物に変化させて、最終的には元の状態に戻ります。フィブリン分解を線溶といいますが、線溶には、プラスミノーゲン活性化にフィブリンが関与せず、生じたプラスミンがフィブリン以外にフィブリノゲンも分解してしまう一次線溶と、フィブリン関与下で生成したプラスミンが安定化フィブリンを分解する二次線溶の2つの反応系があります。
Dダイマーは、安定化フィブリンがプラスミンによって分解されて生じた産物であり、Dダイマー構造を有する混合物の総称です2)

Dダイマーの増加は、血栓形成の結果と二次線溶の亢進状態を反映しているとされており2)3)、血栓症診断のために重要な検査として広く臨床で使われています。欧米だけでなく日本においても患者数が急増している深部静脈血栓症(DVT)、肺血栓塞栓症(PE)や播種性血管内凝固症候群(DIC)などの血栓症では、血中Dダイマー値が上昇することが報告されています3)-5)。血中Dダイマーが高値を示した場合は、確定診断のための画像検査等を行います。臨床適用としては、Dダイマーの陰性的中率は非常に高いことから、疑いが低くDダイマーが正常範囲内の場合はDVTやPEを除外診断できることが示されており、国内外のガイドラインにも除外診断の有用性が記載されています2)-5)。日本循環器学会の「肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)においては、DVTやPEの除外診断用途だけでなく、抗凝固療法の継続期間や終了時期の判断、再発可能性の評価を行う上でもDダイマー測定が有用であることが示されています6)。また、敗血症時などで見られるDICにおいても凝固線溶系の亢進が認められますが、このようなDICの診断においてもフィブリン分解物の一つとしてDダイマー値が使用されることがあります4) 5)
なお、凝固系が亢進している癌患者や妊婦、手術後患者などでもDダイマーが高値を示すことが報告されています4)

1) 日本血栓止血学会 用語集 http://www.jsth.org/term/index.html
2) 福武勝幸:Dダイマーの現状と標準化に向けた課題、生物試料分析、32、380-385(2009)
3) 松本剛史 他:DVT/PEの診断・治療マーカー(フィブリン関連マーカーを中心に)、日本血栓止血学会誌、19、22-25(2008)
4) Tripodi A.:D-Dimer testing in Laboratory Practice.Clin.Chem.、57、1256-1262(2011)
5) 横山健次:高感度D-ダイマー、臨床検査、53、1129-1132(2009)
6) 肺血栓塞栓症および深部静脈血栓症の診断、治療、予防に関するガイドライン(2009年改訂版)(日本循環器学会) http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2009_andoh_h.pdf

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